水平感染も実態把握を
厚労省研究班主任研究者 山口一成さん
【ATLこの人に聞く 6完】
−成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスHTLV1の感染者が、大都市部で増えている。
山口さん 2006―07年の献血者からの抗体検査による推定では、1990年の調査と比較して、関東では感染者が約6万2千人増え、国内の感染者に占める割合も6・9ポイント増えて17・7%になった。中部も地域別の感染者の割合はやや増えている。近畿は実数は減少しているが、大阪など大都市部では増えているようだ。
■いまだ九州が半数
−それ以外の地域では。
山口さん 大都市部で増加している最大の要因は九州・沖縄からの人口移動とみられる。その分、九州では90年調査より感染者数は約11万5千人減り、約49万2千人に。国内の感染者に占める割合も約5ポイント減少して45・7%になった。
−現在の特徴は。
山口さん 発症が高齢化している。88―89年の調査では平均58・3歳だったが、06―07年の調査では同67歳になった。問題なのは、高齢者には効果が薄いとされる骨髄移植が治療法のメーンなので、治療の選択肢が限られてくること。新たな治療法を検討する必要がある。
■研究体制の構築を
−母乳に次ぐ感染経路とされる水平感染(性感染)の現状は。
山口さん 07年の調査で、20年前に20―40代だった層で感染者の割合が約1・5倍に増えていることが分かった。水平感染とみている。各年代別の感染者の割合は、88年当時の20代は1・38%が20年後の40代になると2・18%、30代は2・99%が4・28%に、40代は5・05%が7・34%になっていた。
これまで夫婦ともにATLを発症した例は報告されていなかったので、対策を取っていなかったことが背景にある。実態把握が必要だ。
−防止策はあるのか。
山口さん 水平感染では、基本的に男性から女性へと感染するとみられている。感染を防ぐ薬の開発が急務だ。
−今後の対策や課題は。
山口さん 現在、研究者や患者の代表者でつくる「有識者会議」を厚生労働省の「協議会」として位置付けてもらいたい。治療や感染予防を強化するために、国は本腰を入れた研究体制の構築や、啓発活動をバックアップすべきだ。
=おわり
× ×
◆やまぐち・かずなり 長崎県出身。熊本大医学部卒。ロンドン大、国立感染症研究所血液・安全性研究部部長を経て、現在は同研究所客員研究員。ATLに関する厚生労働省研究班(山口班)の主任研究者も務め、2010年度に3年間の研究成果をまとめた「最終報告書」を提出予定。
=2010/03/18付 西日本新聞朝刊=
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記事中でも紹介されている、患者会の、
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