治療法は確実に進んだ
【ATLこの人に聞く 5】
鹿児島市の今村病院分院院長 宇都宮與さん 治療法は確実に進んだ
−血液内科医療に力を注ぐ今村病院分院が診ているATL患者について、教えてください。
宇都宮さん 1年間の新規入院患者は30人前後。血液疾患のなかで最も多く、3割を占める。通院を加えると50人近くになる。高齢社会になり、平均発症年齢は60歳を過ぎてきた。60代、70代が中心で80代もいる。
−どんな病気か。
宇都宮さん 多い順に、急性型▽リンパ腫型▽慢性型▽くすぶり型−の四つのタイプに分けられる。くすぶり型でも皮膚に腫瘍(しゅよう)をつくる場合があり、皮膚型を加えて五つとする議論もある。
ATLの病態は非常に複雑で、この分類はかなり無理した結果。「先週と今週で病型が変わった」ということもある。従って、治療は血液疾患のなかで格段に難しい。
■新薬が十分な効果
−診断も難しいと聞く。
宇都宮さん 症状が多様なので血液内科医でなかったり、専門医でもATLを診た経験がなかったりすると、正しい診断まで時間がかかることが少なくない。ATLが多い鹿児島県内でもまだまだ課題だ。
−どう治療するのか。
宇都宮さん 基本は抗がん剤治療だが、15年ほど前から、骨髄移植を行っている。私の病院では1996年に始め、移植後3年の生存率は3割。まだまだ低いが、治る人が出てきたのは大きい。
通常の骨髄移植の場合、まず抗がん剤と放射線でがん化した骨髄細胞を破壊してからドナー(提供者)の骨髄液を注入する。体に負担がかかり、かつては「30歳を超すと難しい」と言っていたが、現在は55歳くらいまでが目安。さらに、抗がん剤を減らして強力な前処置をしない「ミニ移植」だと70歳まで可能だ。
−治療に進展がみられていると。
宇都宮さん 抗体医薬の新しい薬も登場し、全国で治験(臨床試験)中だ。抗体医薬とは、正常な細胞もたたいてしまう抗がん剤に対し、がん細胞だけを狙い撃ちにする。新薬が患者のATL細胞を殺す十分な効果を確かめている。
■悲観しなくていい
−ATLは手ごわい病気と思っていた。
宇都宮さん 確かに30年前は、発症が分かると「あと3カ月です」と説明していた。今も悲観する人が患者にも医師にも多いが、間違っている。難治性の病気だが、新薬や新しい治療法が登場し、移植の対象も広がり、長期生存や治癒する人が出てきた。闘う武器がずいぶん増えた。近い将来には、「恐れる必要はない」と言えるようになるのではないかと考えている。
× ×
◆うつのみや・あたえ 1977年、鹿児島大医学部卒。87年から鹿児島市の今村病院分院に勤め、2004年から院長。血液内科主任部長を兼務し、専門はATL。治療の第一線に長年、立つ。昨年5月からは鹿大大学院客員教授も務める。
=2010/03/17付 西日本新聞朝刊=
◆ATL問題に関する質問や意見をお寄せください。住所、氏名、連絡先を明記の上、あて先は〒810−8721(住所不要)、西日本新聞報道センター「ATL問題」取材班。
ファクス=092(711)6246
メール=syakai@nishinippon.co.jp
◆ATL患者や家族からの相談は
NPO法人「日本からHTLVウイルスをなくす会」=http://www.minc.ne.jp/~nakusukai/index.html
NPO法人はむるの会=http://htlv1toukyou.kuronowish.com/
◆ATLのことを詳しく知りたい時は
JSPFAD(HTLV1感染者疫学共同研究班)=http://www.htlv1.org/
========================================================================
記事中でも紹介されている、患者会の、
NPO法人「日本からHTLVウイルスをなくす会」と、
NPO法人「はむるの会」、
それに加え、
NPO法人「グループ・ネクサス」は、
私も会員として参加させてもらっています。
どの患者会も熱心に活動をされています。
=========================================================================