長崎大学病院がん診療センター副センター長 福島卓也さん
〜西日本新聞のATL連載の第四回目です〜
(火の国太鼓さんからの情報です。いつもありがとうございます!)
【ATLこの人に聞く 4】
●告知後の心のケア大切
−成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスHTLV1はどうやって感染するのか。
福島さん 主な感染経路である母乳には、リンパ球が多く含まれている。母親が感染者の場合、その母乳内のリンパ球はHTLV1に感染しており、それを飲んだ乳児の体内の正常なリンパ球に濃厚に接触することでうつっていく。
■感染リスク最小限に
−子どもに感染させないためには。
福島さん 母乳の代わりに粉ミルクを与えるのが最善だ。感染者が多い長崎県では、行政と研究機関でつくる「ATLウイルス母子感染防止研究協力事業連絡協議会」が、感染者が分かった母親に20年以上にわたって「授乳制限」を勧めてきた。その成果として、生後6カ月以上の長期授乳で20・5%に上った母子感染率が、粉ミルクだけで育てると2・4%に減らせることが分かっている。次世代までには、ATLはまれな疾患になると思う。
−短期間の授乳もいけないのか。
福島さん 生後3カ月までの短期授乳でも母子感染率は低いとのデータもあるが、評価は定まっていない。授乳制限には、母子間のスキンシップや乳児の免疫力への影響などのデメリットが指摘されるが、それでも感染リスクは最小限に抑えるべきだ。
ウイルス感染が判明した妊婦には告知の際、子どもへ感染させないための心得や、自らの将来の発病への不安を取り除くなどの「心のケア」も大切だ。医療機関向けの啓発も忘れてはならない。
■1世代で「連鎖」断つ
−なぜ母子感染予防が重要なのか。
福島さん ATLは、感染から発症までに平均50―60年もの潜伏期間がある。国内の発症例は、すべて乳児期の母乳感染だ。1世代だけ母乳を与えなければ、子孫への感染の連鎖を断ち切ることができる。大人になってからの性感染もあるが、50―60年の潜伏期間を考慮すると発症のリスクは非常に低い。
−授乳制限で母子感染は完全に防げるのか。
福島さん 残念ながら、母乳を一切与えなくても感染率はゼロにはならない。母乳以外の母子感染ルートがあるはずだが、仕組みは分かっていない。
−感染が分かったら。
福島さん ATLは、感染しても発症しない人が大多数だ。治癒を目指す骨髄移植は、3年以上の長期生存確率が4割を超えてきており、今後も、完全治癒を目指して研究を進めていく。
× ×
◆ふくしま・たくや 愛媛県出身。長崎大医学部卒。同大病院血液内科講師。白血病や悪性リンパ腫など血液疾患の治療の第一線で、ATL患者への抗がん剤の効果の研究や、骨髄移植などに携わる。
=2010/03/16付 西日本新聞朝刊=
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